顧問ドクター

成井浩司(なるい こうじ)

元虎の門病院睡眠呼吸器科 部長、睡眠センター長

人は人生の3分の1を睡眠に費やしています。睡眠は、からだの休息と修復、
ホルモンの分泌、記憶の整理など生きていくうえで極めて重要な役割を
担っています。健康を維持するためには、食事や運動と並んで、
よい睡眠をとることがとても大切です。

しかし、日本人の5人に1人は、何かしらの睡眠の問題を抱えていると
言われています。睡眠時間や睡眠の質の低下は、あらゆる病気の一因となるだけでなく、日中のパフォーマンスや集中力の低下、
交通事故や産業事故の原因ともなり、社会問題となっています。

日本人に多い睡眠の問題の一つに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)があります。
この病気は、大きないびき・繰り返すいびきを特徴とし、
日中の強い眠気から交通事故などを引き起こす病気として、
今や世間に広く知られる病気となりました。

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近年、SASが高血圧、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中などの心血管病や糖尿病の悪化の要因となる
ことが明らかになり、また早期認知症などの病気の予防においてもSASの治療が重要視されています。
国内外の疫学調査によると、SASは成人の5~10%程度が発症するとされ、日本国内には600万人以上の
潜在患者がいると考えられます。男性に多い病気ですが、女性も閉経後は発症率が増加します。
また、日本人の場合は必ずしも肥満体形とは限らず、あごの骨格が小さいために発症する方も多くいらっしゃいます。

私は1982年に虎の門病院に入職してから定年退職するまでの38年間、主にSASの診療を専門に仕事をして
参りました。当初は治療方法が確立されていませんでしたが、1985年から同病院にてCPAP治療を導入し始め、
シドニー大学との共同研究を経てこの治療法の普及に成功し、1998年には健康保険の対象となりました。
私はこれまで、積極的にこの病気について一般の方々へ情報発信を行い、医療従事者の教育や全国の医療機関の
診療体制構築のお手伝いに努めて参りました。今やSASは診断と治療が確立され全国の医療機関で同様に
診療が行われるまでになり、CPAP(シーパップ)療法が治療の第一選択肢とされています。
それでも、2020年現在、診断を受け治療に至っている方は潜在患者数の10%以下です。

私は今後、SAS診療に捧げてきた私の医師としての仕事の集大成として、これらの未治療の方々や予備軍の方々の健康を守る仕事をしていきたいと思っています。この病気に悩まされているにも関わらず未だに診断も受けていない多くの方々が自ら受診し治療を受けやすい社会環境を作ること、治療の選択肢を広げること、健康保険の対象とならない比較的軽症の方やSAS予備軍ともいえるいびき症の方々が重症化したり生活習慣病に発展したりすることのないよう健康管理のお手伝いをすることに精一杯尽力していく所存です。

「ねむりの樹」のコンセプトを知ったとき、私はこのショップが保険診療の対象となる重症の方のみならず、
重症化する前段階の多くの方々の健康を守るために重要な事業だと確信し、「ねむりの樹」の顧問ドクターに就任し
監修していくことを決めました。SAS診療を行う医療機関と連携しつつ、予防的な睡眠の自己管理を啓発することで、
より多くの方々が最適な睡眠をとり、より健康になれる社会を目指します。

成井浩司 略歴

専門

  • 呼吸器病学、睡眠医学
  • 睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠呼吸障害
  • 内科学会認定医、呼吸器病学会専門医、日本睡眠学会睡眠医療認定医師

職歴

  • 昭和57年3月東海大学医学部卒業
  • 昭和57年4月虎の門病院内科研修医
  • 昭和60年4月東海大学第Ⅱ内科勤務
  • 昭和63年4月虎の門病院呼吸器科医員
  • 平成5年シドニー大学 Colin Sullivan教授に留学(オートCPAPの共同研究)
  • 平成15年1月虎の門睡眠呼吸センター開設 (日本初の本格的なセンター)
    虎の門病院センター長、呼吸器センター内科医長を兼任
  • 平成21年4月睡眠呼吸器科 部長
  • 令和2年3月虎の門病院を定年退職